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 無駄な時間を過ごしたような気もするが、もう一度魚探しを始める。もう海の中にはいない事が分かっている為、今度は陸の岩場や、空を探す。非常識なこの世界で魚が空を飛んでいようと不思議ではないと思った。  だが、岩場の隙間にも空にも生物はいない事が分かると、高杉は砂をつかんで悔しそうに投げ飛ばしはじまる。そんな事をしても体力を使うだけだというのに。 「――……」  小さく小さく風にのって何かが聞こえた気がした。もう幻聴まで聞こえてきてしまったのだろうか。 「――せろ……」  やはり聞こえる。誰の声だ?   聞こえてくる方を振り向くと高杉がいた。 「――せろ……」  高杉の口は動いていない。動いているのは高杉の足元。砂だった。先程高杉が砂をすくい上げたくぼみが、聞こえてくる声に合わせ振動している。  高杉もそれに気付いたようで、聞こえてくる声に目を丸くしていた。  もしや、いるのかそこに……魚が。  いても不思議ではないじゃないか。何故気付かなかった。貝が弾丸のように海を動きまわり、魚が砂の中で生活していても、それがこの世界ではないか。  期待を込めながら、急いで砂を手で掘る。土とは違い、かきあげる度に指かさらさらと砂がこぼれ落ち効率が悪い。だが、そんな事は今胸の中にある期待に比べたら些細な問題だ。  必死に砂を掻き分け、一五センチ程穴を掘ると、つやつやと鮮度の高そうな魚の口が見えた。期待が確信に変わり、目を輝かせながらさらに砂をかきわける。  どうやら頭を上にして、直立した状態で埋まっているようだ。  完全に頭が出てくると、気持ちの悪い魚眼をぐるぐると動かし、口をパクパクさせはじめる。背中は青黒い色をしていて、口先が黄色い。見事な秋刀魚(サンマ)だった。  砂の中にいたくせに、濡れているようなその質感と、狂ったような感情の無い目が恐怖を生み出している。  気持ちは悪いが、頭を掴み引っ張る。しかし表面がぬめぬめとしていて、力が入らない。それどころか、全く抜ける気配すらないのだ。  ためしに周りの砂を掘り出してみるが、どういう理屈か砂が一定以上減らないのだ。どうやって秋刀魚をとればいいのか。そう悩んでいると。
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