本文

9/34
前へ
/34ページ
次へ
 残された高杉と私は仕方なく小屋へ向かった。ドアノブのないドアを押し開くと、中には外観相応の広さで人が四人転がれる程度。壁には鎌や鍬(くわ)、スコップ等、農業道具がかかっていて、とても海で使う道具ではない。部屋の右隅に汚い網目が無駄に多きい網が無造作に置かれており、やる気をいっそう削いでくる。せめてシュノーケルやモリはないものか。  貝は適当に拾うとして、魚は網しかないのでは追い込み漁しかあるまい。ペンギンについては後で考えよう。  とりあえずとして網と、足元に転がっていたバケツを持って外へ出た。高杉は何故かスコップを持って小屋から出てくる。  まずは簡単そうな貝から捕える事にしよう。逃げる事もしないし、拾うだけでいい。幸い海の透明度は高いようだ。  上着とズボンを脱ぎ捨てパンツだけになり手ぶらで海の中へ。高杉も私にならい裸になってついてきた。余談だが、シャツを抜いた高杉は、恵比須様を彷彿とさせた。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加