第1章

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猫なら三万、 犬ならば二万。 合成では一万。 何の話かというと三味線の皮の話である。 猫を飼っている人にこの話はしない。 鬼畜の如くと蔑んだ目で見られるのは分かりきっているからだ。 猫が嫌いな訳ではない。 もちろん犬だって。 かわいい動物が出演している番組だってよく見ている。 注文がきてから準備して、 獲りに行くから日数がかかるのよ。 仲間内では冗談で済まされる。 彼女たちの何人かは猫や犬を飼っているらしい。 偽善者ぶる必要もない。 世界は奇妙な回転をしている。 グレープフルーツと温めた牛乳を朝食としてから、 今朝一番に電話をかけた。 昨夜ものすごい音を発てて三味線の皮が破れたのだ。 狼男も逃げ出すような断末魔の叫び声を上げて。 合成ならば破れない。 でも音が全く違うのだ。 知ってしまえば安くてもどうしても満足はできない。 そうして何年かに一度張り直すことになる。 仔を産んだ猫は駄目なのだと言われている。 女子の立場で考えると理不尽な事実だ。 決して差別ではなく、 やはり音が問題なのである。 例え単なる遊びではあっても。 往々にして、 遊びほど金がかかるものだ。 本職は事務員である。 職場はコンクリートが剥き出しの古い四階建てで、
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