小料理屋「春」

2/15
85人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
──「菫ちゃん、悪いんだけど今日お店手伝ってくれない?」 土曜日の午後3時。 仕事を終えて自室でくつろぐ私に、心底申し訳なさそうに頼む母を見て、珍しいなーと思いつつ 「明日休みだしいいけど、調子でも悪いの?」 母は、小さな小料理屋を営んでいる。 料理も接客も好きだからと始めたお店は、今では近所のおじさん達の癒しになっていると思う。 「ううん、昨日お客さんが持って来てくれた日本酒が美味しくって...」 「飲みすぎちゃったわけね」 「...えへ」 えへ、じゃないし... まぁ滅多にないお母さんの頼み事だからいいけど。 「今日は飲みすぎないでね~」 なんて軽口を叩きながら、私は内心 久しぶりにお店に立つ事に楽しみを感じていた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!