第十二話 今日の夜御飯って何?

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「駄目だ。俺から話す。俺の番だから。」 怖い。とても怖い。 言われることはわかってるから、澤ちゃんの胸の気持ちはもうわかってるから。 この沈黙が怖い。正直こんなに澤ちゃんとの時間を怖いと思ったのは、今までにほとんどない。でも、今日は特に、今この瞬間がすごく怖い。 澤ちゃんが怖い。澤ちゃんから出てくる言葉が怖い。耳が聴こえなくなればいいのに。 いつも俺に合わせてくれるのに、いつも俺についてきてくれるのに、いつも俺を待っててくれるのに、いつも俺を… 「岸、あの俺、あんまこういうこと慣れてないから。上手く言えないかもしれないけど、俺なりにその…頑張って言うから、ちゃんと聞いてな。」 澤ちゃん、今日結構話すんだね。そういえばいつも言葉数少ないっていうか、俺ばっかり話してるっていうか… 「俺、好きなんだ。」 知ってるよ。 「お前が思ってるよりきっと、前からずっと好きで…」 だから知ってるって。兄貴だろ。気付いたのは澤ちゃんが写真見てすっごい笑ってたから。あと、すごく切ない顔してた。俺には見せない顔してた。 「でもほら、あれじゃん。俺、男だからさ、そういうのってなんか気持ち悪いって思うかもしれないし。」 まあ、最初はね、確かにびっくりしたけど。でも別に男が男を好きになっちゃ駄目なんて、兄貴も言ってなかったし、辞書にも載ってなかったし。 世間は徐々に受け入れ態勢整ってきてる気もするよ、確かテレビで見たよ。 「俺も男好きになるの初めてだし、男っていうよりはお前を好きになったっていうか。」 そうだよね。俺も男好きになるとか初めてだし、どっちかというと俺は澤ちゃんだから好きになったっていうのもあるし… 「だから、そんな女子にするみたいにどうこうしたいとかは思わないから。いや、思わないっていうのは嘘。したいけどやりかたわかんないし…また調べるわとりあえず。」 いやいや、だから兄貴いないんだってば。澤ちゃん妄想で兄貴をそういう風に?そこまで?そこまでの告白を俺に聞かせるの?なんだろ、この拷問は。 「前みたいにあんな強くしたりしないから、とりあえず今まで通り一緒に話したりとか、たまに少し触らせてもらえれば…いや、いやらしい意味じゃなくて、手とか背中とか、たまに顔触らせてもらえれば…いいから。」 ん?ん?? ちょいとお待ちよ、お客さん。
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