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「とりあえず、お前が好きなんだ。これだけ伝えたくて。あのまま終わるなんて無理。俺は、お前が好きなんだよ。これ、本当に本当だから。以上。」
今って、兄貴への愛の思いを俺にお伝えしてるんですよね?
前のページ戻りたいわ、ちょっと待てよ。
今までの全部、兄貴への気持ちじゃないの…って俺??
「岸、聞こえてる?」
「へあ?あ、聞こえてる聞こえてる。耳は昔からいいからね。すごくいいから、地獄耳だから。ははは。」
澤ちゃんが今までにないくらい変な目で俺を見てくる。
ちょっと待って、ちょっとだけ巻き戻させて。
「岸お前、好きなやつできたのか?」
「え?いないよ、いや、いないっていうかその…えっと…」
ここで澤ちゃんのこと好きって言ったら両思いで晴れて恋人同士だー!
じゃねーーーよーーー!!!
違うんだって、俺は今日澤ちゃんに俺の目の見えなくなるって言って、20歳過ぎたら俺のことはほっといて、大人の世界に羽ばたけよってことを言おうとして意気込んで来たんですけど。
「澤ちゃん、ごめん!」
「いや、わかってる。もうわかってるから。俺の気持ちを言いたかっただけだから。」
「いや、ごめんっていうのはそういうごめんじゃなくてその…」
誤解させてしまう、俺も好きだ。好きなんだけど、そうじゃない。
俺の目のことを知ったら、澤ちゃんは悲しくなっちゃうだろ?
兄貴がいなくなって、俺まで目見えなくなるとか知っちゃったらどうするんだよ。
そんな悲しい場所に澤ちゃん追いやりたくないよ。
ていうか、澤ちゃん兄貴のこと何とも思ってないの?
じゃあ、何であんな切ない目で兄貴の写真見てたんだよ、それ先に教えてよ。
「じゃあ、いいの?」
「へ?あ、いや、その…あ、澤ちゃんごめん。今日俺用事あったの忘れてたんだった。早く行かなきゃ待ってるから。」
「お、おう。誰が待ってんだよ。」
「え?誰だったかな…とりあえず家に戻る。ちょっと本当に今日は本当にごめん。帰る。また明日!」
俺はさっきから何を言ってるんだろう。予定なんて、俺の予定なんて澤ちゃんしかないんだし、澤ちゃんしか考えてないんだからね。
「うん、気を付けてな。」
でもごめんよ、澤ちゃん。ちょっとその告白は、思いのほか想定外でありましたよ。
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