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「君たち、これからどうするつもり」
「どうする、とは」
「付き合いも長いのだし、きちんと片、付けたら」
「はあ……」
「まあ、夫婦のことだから。当人同士しかわからないことだけど、あれだよね、尾上先生んところの関係はもう終わってる。子をかすがいにしたところで、修復はムリだ。余計なお世話かもしれないけど、もっと早くに離婚なり再婚なりした方がお互いに再出発しやすかったんじゃないかな」
「それは……あちらにもお子さんがいましたし……」
「うん、でも、大きかったよね、物心ついていたよね」
「けど、実の母は子供には必要ですわ」
「そこなんだけど。僕、他の分野の先生とも話しをするんだけど、彼らが上手いこと言ってたなあ。親子の不和を見せ続けるのも立派な虐待だ、って。
政君、慎一郎君が産まれた時は小学生でしょ。あなたも知っての通り、尾上先生、女遊びが相当派手だったから、元々夫婦仲良くなかったし。そこへもってきて、あなたがいるわけだ。女方面は落ち着いたけど、ある意味最悪だよね、父親に本命が現れたわけだから。多感な時期に彼も辛かったと思うよ。尾上先生ができるだけのことをしたのは認めるけどさ、政君に関してはあなたも責任ある、って思うんだ。実の親にこだわる必要、ないんだし。
――もう済んだことだから今更どーしようもないし。彼も結婚するそうだし。政君はいいとして、ここらでけじめつけた方がいいよ、あなたたち」
武が放つ一言一言が耳に痛い。
私も意地を張りすぎてしまった。お互いのために良かれと思って今まで過ごしてきたけれど、頑なな人をより強固に殻に閉じこもらせてしまっただけ。
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