第1章

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 奈々子が、和弥に説明する。和弥は、部屋に機材を運び、論文の仕上げに取り掛かった。  次の日の早朝、ジョギングするからボディーガードしてという明香利に起こされ、和弥もジョギングするハメになった。一見、運だけの明香利のようだが、日々人並み以上の努力は欠かさない。 「かわいい、流々ちゃん。和弥も可愛いと思っているでしょう?」  明香利のジョギングのペースはかなり速い。そこで又、平気で会話をしていた。 「かわいいよ」  妹のようだとも思うが、可愛いと思っていた。 「素直ね。イジメがいが無い!」  薄いピンクのジョギングウェアでも、明香利は十分綺麗に見えた。 「私は、女優に転向してから、モデルの養成学校を建てるの。私がモデルになった時、ノウハウを誰も教えてくれなかったし、何でも実践して覚えた分、失敗もしたから。それに、モデルを目指していない子も歓迎。美しくなる事は女性なら誰でも思う事だから」  明香利は、いつも遠い未来まで見ていた。その夢でありながら、堅実な道は、明香利を勝利の女神にする。和弥は、自分が道に迷うと、明香利を見ていた気がした。 「和弥くらい、食べさせていけるから。和弥は、研究に熱中して」  明香利の眩しい笑顔に、和弥も笑顔を返していた。 「俺も、明香利だけは、どんな事をしても守ってゆくよ」  明香利に無いものは、安全と安心。明香利は、好きを通り越して、もう家族のような気分だった。離れていても、ずっと守りたい相手だった。  ウエディングドレスのモデルは、不足していたのは女性のモデルだった。東雲は、タキシードを着て、モデルをエスコートする役目だったが、和弥は目の前に白いドレスを差し出された。 「着られない」  拒否しようとしたが、明香利に却下された。着てみると、意外にも和弥に似合っていた。 「大丈夫みたいね」  和弥の顔が女顔な事と、最近の女性の背が高い事が原因らしい。  眩しいばかりの明香利や、初々しい流々のウエディングドレスを見ながら、和弥は作り笑いで誤魔化した。それが、又、どことなく清楚に見える和弥だった。
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