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祐文と村長、二人はお互いに言葉をぶつけ合い会話は平行線を辿る。
そして同時に二人の会話を傾聴していた人々は、彼等の主観からすれば勝手な事を並べ立て被害者である筈の自分達を弱虫と言い切った祐文への怒りが沸点に達し、いよいよ襲い掛かろうとした時ある異変が起こった。
キチキチキチキチキチキチキチキチッ!
そんな人間の神経を逆撫でる様な甲高い羽音立てながら、体長約70ミリ程の暗い緑色をした小さく細長い、地球のバッタやイナゴに非常によく似た昆虫が数十匹、祐文達を包囲している人々の周囲に突如として現れる。更にその昆虫が放つ羽音に応えるように同じ昆虫の群れが何十、何百、何千と瞬く間に集まり、最終的に昆虫の総個体数は恐らく数億、数兆…もしくはそれ以上という数にまで膨れ上がる。
(ようやく策が発動したか…)
祐文は自身とギシェムが仕込んでおいた対抗策が、この異世界の住人達と全面衝突する直前のギリギリのタイミングで発動した事に内心安堵の声を上げる。
しかしこの光景を見た集落の住人達や佐々野少年に報復する為に集った人々、特に大人達は顔色を失い次々と恐怖の声を上げ始める。
「…アポルオンだ…奈落の底から破壊者がやってきたっ!」
「なんという事じゃ、よりにもよってこんな時にっ…!」
「こんな事ってあるのっ!一体私達が何をしたって言うのよっ!…なんでここまで打ちのめされなければならないのっ!!」
人々は恐怖と悲痛の叫びを上げ、パニック状態に陥り騒然となる。
「“アポルオン“ 今のこの状況はこの世界においてそう呼ばれているのでしたね…私達の世界では “相変異“ あるいは “蝗害“ と呼ばれている現象ですが」
「クロイ・ヒロフミ、貴様っ!!」
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