第1章 “発端”

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-未成年に対する警察の事情聴取は人権保護や少年法などの様々な事情により、かなりの制限や条件が付けられて困難を極める。 二人の中学生はそれらの事に精通していた為に祐文達の事情聴取に最初から反抗的な態度を示し実に非協力的であった。すでに時刻も夜中の12時を回り日付が替わっていた事もあり結局祐文達は二人を各々の家まで送り届け、また後日個別に保護者同伴で警察署に来てもらい聴取に応じてもらう事となる… 「あの二人、署まで来ると思うか?」 「多分来ないですね。両親に(子供が警察を怖がっているので、署に行くのはお断りします)と言わせてしまえばよいだけですからね…」 祐文と先輩刑事は二人を家まで送り届け後、パトカーの中でそんな話をしていた。 「と、なると俺達自身があちらさんに出向いて聴取するしか無いわけか…」 先輩刑事はうんざりした様子でそう呟く。刑事が少年達の自宅を訪ねて事情聴取を行う場合、制限と条件のハードルは跳ね上がり更に聴取が困難になるのは解りきっている為だ。 「しかし聴取に赴くまでに、重傷を負った中学生・少年Aと現場から逃走を図った二人の中学生・少年BとC、そして現在Aに重傷を負わせ逃走中の少年D。この四人の関係性をつまびらかに出来れば…案外BとCはすんなり“落ちる”と考えますが」 「それが簡単に行けば苦労はせんよ…って何か良いアイデアでもあるのか黒井?」 「良いアイデアかどうかは解りませんが…少なくとも短時間の捜査で彼らの口を割らせる事は出来ると思います。ただあまり褒められた手段ではありませんが」 先輩刑事の質問に祐文は少し後ろめたそうに答えるのだった…。
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