第6章 “帰還“

6/13
前へ
/115ページ
次へ
祐文に逆に問い掛けられ村長はおし黙る。 その一瞬の隙を突いて祐文はギシェムに目配せし事前にこういう最悪の状況に陥った時の為に練っていた対抗策を発動させるよう密かに促す。しかしそうしている間にも祐文達を取り囲む人々の怒気は刻一刻と溜まっていくのが経験上 手に取るように理解している祐文は彼らの暴発を防ぐ為に、そして先程ギシェムに促した策が発動するまでの時間を稼ぐ為に村長との会話を続ける。 「…もしかして佐々野君に報復を行う為に身柄を引き渡せ。と仰りたいんですか?」 「…ああそうじゃ。儂等はそ奴を何度 八つ裂きにしても足りぬ程の恨みを抱えておる」 村長は静かに、それでいて殺気を孕んだ低い声でそう祐文に告げる。 「そいつの所為で一体どれだけの人間が苦しんでんのか解ってるのかっ!!」 「住んでいた村も家もソイツとその仲間達に焼かれた…絶対に許せねぇっ!」 「食糧を、家畜を、女房子供をたった一晩で全て奪われた俺達の気持ちなんてお前らに解るものかよっ!」 「お父さんとお母さんを返してよおぉぉぉ!!」 村長の声を皮切りに周囲の人々も次々に佐々野君に対して糾弾する声を上げ始めにわかに暴動が起きそうになる程、祐文達とその周囲は息が詰まる程の緊張感に包まれ、一触即発の空気が流れ始めるが…
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

123人が本棚に入れています
本棚に追加