第6章 “帰還“

7/13
前へ
/115ページ
次へ
「自分達の世界の問題を自分達で解決しようともせず、安易な方法で他人に、異世界の人間にすがり付くような弱虫共が…あまり自分勝手に喚かないでもらおう。怖気が走る」 祐文はそう低い声音で呟く。 この傲慢とも取れる祐文の物言いに、人々の憎しみはピークに達し祐文達に一斉に襲い掛かろうするが、何故かその場に凍りついたように一歩も動く事が出来なくなり中には滝のように大量の汗をかき意識を失い倒れる者も複数では始める。 『こっ…これは一体何が!?』 ギシェムは自分達を取り囲んでいる人々に起きた異変の原因が理解できず戸惑いどうしてこうなったかと祐文に尋ねようとするが… 『・・・・』 振り返り祐文の姿を見た途端、ギシェムは言葉を失いそして同時に周囲の人々がなぜあのようになってしまっているのかを解ってしまう。 それは祐文から放たれる尋常ならざる気迫の所為で、人々は俗に言う“殺気“とか“剣気“にあてられた状態に陥っていると理解する。 『まさかたった一人の人間の気迫のみでこんな事態に…いやそれ以前にこんな事が人間に可能なのかっ…!』 ギシェムは眼前で起こっている現実にただただ驚嘆し、改めて気迫のみで百人からの人間を居竦ませる祐文に畏れを抱くのだった。 「…少し乱暴な物言いであった事は認めますし謝罪もしましょう。しかし意見を変えるつもりはありません。佐々野君は元居た世界に連れて帰る。たとえ貴方達を含むこの世界の住人全てを敵に回しても必ずやり遂げる」 「なっ、何故そこまでしてササノ・トーイを庇う。そんな最低のクズみたいな奴をっ!」 祐文が頑として佐々野少年の身柄引き渡しを拒むと、村長は祐文の放つ気迫にややたじろきながらも吐き捨てるようにそう問い掛ける。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

123人が本棚に入れています
本棚に追加