第6章 “帰還“

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「それが私の、いや本官の職務だからだ。たとえどんな凶悪な犯罪者で世間一般の目から見れば殺されてもしょうがないと思われる大悪人でも、法の裁きを受けるまでは安全にその身柄を確保しておくのも本官の仕事の一つだ。私怨による一方的な暴行及び殺傷を目的とした報復などとても容認出来ない」 「ならばっ!儂等が被った被害はどうなるっ!? 体に、心に刻みつけられた傷は一体どうして癒せるのか答えてみせろっ!!」 村長が祐文の答えに対しその場にいる百人の気持ちを代弁するかのような慟哭を上げる。 「その事については私は何も出来ない…なぜなら私も佐々野君も貴方達の都合で無理矢理この世界に召喚された異邦人に過ぎない。それに何より異世界の人間に頼り問題を解決する事に歪みを感じ疑問視していたのは村長、あなた自身だったと記憶しているのですが…」 「確かにそうは言った。しかしあの時と今とでは状況も儂自身の立ち位置も違うっ!…それに失われた命も多い。ササノ・トーイに徹底的な報復を行わぬかぎり儂等は前に進めぬっ!!」 「村長さん、あなたの立場も心情もよく理解できる。がだからこそ私達は対立する以外に術がない…もう一度はっきりと言う。佐々野君の身柄を引き渡す事は無い、もし力づくで奪うつもりならこちらも躊躇なく実力で貴方達を排除する」
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