第6章 “帰還“

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「では話もまとまったみたいなので私達はこれで失礼させてもらいます」 祐文はそう言ってボロボロの身体で佐々野少年を背に担ぎながらその場を去り、例の集落の近くの丘の上にあるギシェムを祀る祠に向かうために移動を開始する。 「勇者と “愚連隊“ の連中をまとめて討伐してくれた事は素直に感謝する…が二度と儂等の前に姿を現すな」 「…安心して下さい。言われずともそのつもりですよ」 人々の間から抜け出す際に、すれ違った集落の村長と祐文は互いに目を合わせる事なくそんなやりとりを交わしてそれ以後は二人は押し黙り、村長は騒ぎの後始末を始め、祐文達はゆっくりと丘の上に向かい歩みを進める。 「二度と来るんじゃねぇぞ、このクソ野郎!」 「人の皮を被った悪魔共めっ、お前達二人共まとめて地獄に落ちろっ!」 「今度そのツラ見せてみろ。絶対にブッ殺してやるっ!!」 歩みを進める祐文達の背に、集落の住人達や佐々野少年や愚連隊によって故郷を焼け出され、家族を奪われた人々の怒りと憎しみ、それに悲哀の交じった怨嗟の声が突き刺さる。
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