第6章 “帰還“

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『自分達が撒き、収拾がつかない程 大きくした災厄を命懸けで鎮めた祐文さんになんという言い草だ…つくづくこの世界の人間達は恥を知らない』 「そう言ってやらないでくれないかギシェム。彼等とて振り上げた拳の落とし所を見つけられずに戸惑っているだけだ時間を経てば少しは落ち着くだろう。だが私や佐々野君に対する恨みは一生彼等の中からは消え無いだろうがな…」 『しかし、あの言い草はあまりも身勝手過ぎる』 「…皆 生きていくのに必死なんだ。その為なら何だって利用するし利用価値が無くなれば切り捨てる。特に今みたいに治安があまり良くなく、人心も荒廃している状況ではな…ついでに言えば職業柄 先程のような言葉は言われ慣れているし、全ては私自身の行動と選択の結果だ。ああ言われ悪意を向けられる事は始めから覚悟していたよ」 ギシェムがこの世界の住人達の余りの身勝手さと自分本意な思考に憤っているのを祐文はそう言って諭し歩みを進める。 そうしているうちに祐文達は丘の上の祠に何とか辿り着きギシェムが集落から密かに運び出したこの異世界に行き着いたばかりの頃に没収された所持品を祐文は身に付け直すそして-- 「…さてそろそろ還るとするか。っとその前にギシェムあの昆虫共を…」 『解ってますよ、祐文さん達を無事に地球に送還してから昆虫共の群れを全て散らして “アポルオン“ が起きないように処理しておきます』 「助かる…あとは私や地球の人々を二度とこんな面倒事に巻き込まないでくれ」 『それは…確約出来ませんねぇ』 祐文の言葉に例の人を食った様子でギシェムがそう答えた直後、祠に祀られている例の召喚陣が刻み込まれた鏡が強烈な光を放ち、みるみる祐文と佐々野少年を包み込んでゆき…光が収まり完全に消えてしまった後、二人の姿は完全にこの世界から消えていた。
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