刑事、異世界に行く。

第１章 “発端”

「イジメだったか…」

先輩刑事は少年課の自身のデスクでまとめられた捜査資料に目を通しながらそう祐文に語り掛ける。

「事件発生当初からなんとなくそんな気がしていたんです。だからあんな手段を…」

「解ってるさ。この手の問題は普通の聞き取り捜査じゃ時間が掛かりすぎる。誰だって自分の身が一番かわいい…だから誰も彼も皆 口を閉ざすモンだしな」

祐文に皮肉っぽく先輩刑事はそう返す。その言葉に多少顔をしかめた祐文は事件発生の原因と経緯を語る。

「まず、少年Aに暴行を加え今なお逃走中の少年D。本名:佐々野斗唯(ササノ・トーイ)がイジメの標的だったそうです」

「ん？暴行を加えられたAが標的じゃ無いのか？」

「はい。むしろAが中心となってBとCの二人、あと数人を加えたグループで佐々野君をイジメていたそうです…もっともA達は同じクラスで浮きがちで１人でいる事が多かった佐々野君と遊んでやっていると周りには言っていたそうです」

「で、A達は佐々野少年が自分達に抵抗出来ないように上手く誘導して、やりたい放題やってた訳だ」

捜査資料に目を通しながら先輩刑事は吐き捨てるように呟く。

「パシリに強請りに集り、万引きの強要、佐々野君の制服や体操服、靴や上履きを隠したり時には捨てたりもしていたそうです。更に佐々野君のご両親が共働きなのを良いことに度々ご両親が留守の時を狙い彼の家に押し入っては、マンガ本やゲーム機やゲームソフトを強引に奪っていったそうです」

「とんでもねぇ糞ガキ共だな。よく今の今までバレなかったモンだぜ！」