第1章 “発端”

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先輩刑事は心底うんざりした様子で祐文に報告を促す。 「A達と佐々野君の担任はイジメの実態をほぼ把握していたみたいです。しかし彼は普段からクラスで面倒事が起きるのを嫌い見て見ぬフリしていたようですが、どうにも計算高く損得勘定で物事を判断している小賢しい一面もあったようで、表向き評判が良く絵に描いた様な優等生であるAとその友人達を糾弾して彼らの内申点を低くするような事は学校にとって、なにより自分自身にとっても大きなマイナスになると判断してA達の行為を放置していたようです」 「解りきっていた事とはいえ、胸糞悪い野郎だぜっ!どうせ校長や教育委員会の連中も“我が校にイジメは無かった”とか言って責任逃れするのは目に見えてるしな」 先輩刑事は憤懣やるかたない様子で、学校や教師達の我が身の安全しか考えていない対応を罵るが祐文は逆に難しい顔して、先程上がってきたばかりの新しい捜査資料を睨める。 「どうかしたのか?」 祐文の様子を訝しんだ先輩刑事はそう尋ねる。
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