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「…見つからないですね佐々野君」
警邏中のパトカーを運転しながら祐文は助手席の先輩刑事にそう話しかける。
「事件からもう一ヶ月。そろそろ最悪の事態に陥っている事も想定せにゃならんかもな…」
先輩刑事は気分が優れない様子でそう返す。
「あるいはBとCが供述した通りだったりして…」
「おい黒井、本当にあいつらの言う事を信じる気か?」
「自分だって頭から全て信じる気にはなれないですよ。しかし彼らが供述した(神隠し)のような事例は過去にもありますし…」
そう言って祐文は署に出頭して来たBとCの供述を思い返す。BとCは事件が起きたあの晩、それまで慎重に動いていたAが珍しく直接動きあの廃墟に佐々野少年を呼び出して狩りの獲物に見立て自分達3人で事件の起きた部屋に追い込み、いつもと同じ様に佐々野少年に暴行を加えていた。
しかし突如、部屋中が光に満たされその光を浴びた佐々野少年の様子が豹変。凄まじい力でAに襲い掛かると10秒程でAを半殺しにして無茶苦茶に暴れ回った後、部屋中に満ちていた光が消えてゆくのと共に彼も同時に姿を消した…
という荒唐無稽な供述だった。
「BとCの供述の真偽はともかく、現場の惨状とAが瀕死の重症を負ったのは紛れもない現実ですよ」
「まずはなぜそういう状況になったか究明するのが先か…」
先輩刑事は祐文にそう返し、一旦パトカーを止めさせて自分は車から降りる。
「オレはもう一度、A達と佐々野少年またその周辺の人間関係をじっくり洗い直してみる。前にも言ったがもしかすると今回のヤマにもろくでもない大人達が係わっているかもしれんからな」
「了解しました。自分は事件現場の廃墟とその周辺で事件が起きた日から何か変わった事が無かったか調べてみます」
こうして祐文と先輩刑事は一旦別々に捜査し、各々違った角度から真相解明の為に行動を始める。
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