第1章 “発端”

18/18
前へ
/115ページ
次へ
[現場百回]という格言がある。 それに倣い祐文も事件現場に何度も足を運んでいるが新しい発見は無かった。それでも祐文が何度も足を運んだ理由は、最初の現場検証の際からずっと気に掛かっていた唯一崩落を免れた壁とそこに刻まれていた奇妙な魔法陣の様な模様だった。 事件後、祐文は暇を見付けてはあの魔法陣の事を色々と調べてみたが和製洋製問わずあらゆるオカルト系やサブカル系の本にインターネット上の情報を掻き集めてみたがあの魔法陣と類似するものが全く存在せず、あっという間にお手上げ状況に陥る。 事件発生時、署の鑑識官にそれとなく調べてもらう様に依頼していたがその結果も真相解明の糸口にはならなかった。逆にあの魔法陣の様な模様はレーザー加工機やウォータージェット加工機等の非常に高度な切断・彫刻技術を用いて彫られた可能性が高いらしく、現場にはそんな機材を持ち込み使用した形跡は無く。また廃墟自体に電気が来ていない為にそれらを使用する事自体がそもそも不可能である。という更に謎を深める結果となってしまう… (あの模様はやはり事件とは何の関係も無い? しかしBとCの供述から推測するにどうもあの模様は臭うんだが…) 祐文は一人そんな事を考えつつ、再び事件現場となったあの部屋に足を踏み入れる。 「…どうなってるんだコレは?」 祐文は現場の床に刻まれた新たな魔法陣の様な模様を見付けて思わずそう呟き立ち尽くす。 「二日前に来た時にはこんなモノは無かった。一体全体どうなってるんだ?」 そんな疑問を覚えつつ、新たに現場に現れた魔法陣を祐文はじっくり観察する。 (おおよそ、壁に刻まれているモノと同じだけど細かな造形とか所々違うような…?) そんな感想を抱きながら更に詳細に魔法陣を調べる為に祐文が陣に手を触れた次の瞬間―― 「なっ!?」 魔法陣は突如強烈な光を放ち始め、やがて光は部屋全体を満たしてゆく。その事に強い警戒感を覚えた祐文は咄嗟に魔法陣から離れようとするが―― 「くっ、何なんだコレは離れられないっ!」 魔法陣はまるで強力な意志でもあるかの様に祐文の力を押さえ込み決して離れる事を許さなかった。そしてそうしている間にも魔法陣はますます強烈な光を放ち、祐文はその光のあまりの眩しさに目を瞑ってしまい状況が把握できなくなってしまう。そして―― 光が消えた後祐文の姿は廃墟から完全に消えてしまった。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

123人が本棚に入れています
本棚に追加