第4章 ”闇“

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スクリーンの中の佐々野斗唯に佐々野少年は自嘲気味に言葉を返す。 …佐々野少年はとても恐かったが、まず自分がイジメを受けている事実を両親に打ち明け “学校にはもう行きたくない”と懇願する。 父親は “イジメを受けているのはおまえの心が弱いからいけない。他人のせいにするなっ!” と怒鳴り… 母親は “毎日 嫌な事ばかりじゃないでしょうだから頑張って学校に行きなさい” と慰めにもならない空っぽの言葉を言うと続いて “…A君のお母さんはPTAの会長さんだし、親戚の人は教育委員会に務めているから” と小声で呟く。 [結局の所、あの人達は子供の事よりも自分達の世間体の事しか考えていなかった] 『・・・そしてそれはクラス担任や学校側の人間達も同じだった』 佐々野少年とA達の担任は典型的な “事なかれ主義者” 自分の受け持つクラスで面倒事が起こる事をひどく嫌がっており、ましてやイジメがあったなんて発覚した日には自身の評価がどん底まで落ち、懲戒の対象になり最悪 解雇・免職になりかねないと恐怖した彼は、小賢しくも個人的な伝手を使い教育委員会や更に教職員組合と共謀し、佐々野少年の訴え“イジメを受けている”という事実をクラス内外に出回らないようにあらゆる手段を使って妨害または黙殺し、A達の行動や振る舞いを知っていていながらそれらを放置し一切関わらない様にしていた。 [家にも、学校にも、外にも僕の居場所どころか逃げ場もなかった…だったらもう潔く自分で自分を殺めてこの世界から居なくなろうと考え始めていた] 『…そんな事ばかり考えていた時だった。今から丁度一ヶ月程前、A達に呼び出しを受け例の集合住宅の廃墟で “あの声” を聞いたのは』
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