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そう語ると又も書き割りのような視聴覚教室が突然消え今度は映画館の客席に座っている事に佐々野少年は気付く。
だがいい加減こういった展開に馴れてきた佐々野少年はこの状況変化をあっさり受け入れる。するとそれに応じる様に映画館の映写機が回り始め異世界の様子を映し出す。
[―地平線の果てまで続いているかのような青々とした大草原、鬱蒼と生い茂る広大な樹海、巨大な山々、天空を往く浮遊島や人工物と思われる浮遊都市群、小型の飛行機程の大きさがある巨鳥、宇宙にまで届いていそうな巨大な塔…まさしくゲームやマンガや小説に出てくる “幻想的な世界” が突然、目の前に現れたんだ]
異世界の様子を映し出すスクリーンに又も、もう一人の自分が現れ佐々野少年が初めてこの異世界に降り立った時の事を語る。
[…もっと小さい子供の頃から、名前の事でイジメられ、ハブられ続け友達も一人もいなかった僕はよく空想の世界に浸って寂しさを紛らわせていた。そしてこの異世界は僕が空想した世界と同じ…いやそれ以上に僕の心を感動と興奮で満たしてくれた。ただ…]
『ただ、この異世界の人間共も地球の人間と同じで醜悪な汚物の塊のような連中だった』
スクリーンの中の佐々野斗唯の言葉を引き継いだ佐々野少年はそう吐き捨てる。
“フラウワー”という女神に導かれこの異世界にやって来た佐々野少年を待っていたのは女神の力をかりて自分を勇者として召喚したという人間達の浅ましい欲望と汚い裏切りだった…
[復讐だって立派な正義、報復は当然の権利だ]
『許せなかった…散々人の事を持ち上げておきながら用が済んだらゴミのように僕を扱った奴らが。作り物の笑顔を作り好意を持っているかのようにすり寄ってきて僕を騙し貶めた連中が…だからそんな奴らの大切なモノを壊して、燃やして、奪って、殺した』
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