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『このまま僕は死んでしまうのか…再び全て奪い取られて消えてしまうのか?』
そう呟いて佐々野少年は暗闇の中で想像する。
“勇者” でなくなった無様な自分を、何の取り柄も無く勉強もスポーツも人並み以下、この可笑しな名前のせいで友達もできずに絶えず誰かから笑われイジられイジメ続け一人の人間としての尊厳を奪われ踏みつけられ続けて終わってしまうこれ以上無いというくらい惨めな自身の最後を。
『そんなのは、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌嫌だ嫌だ嫌だあよぅっ!!』
暗闇に佐々野少年の慟哭が響き渡ったその直後――
――ずいぶんと怖い思いをしたのね…でももう大丈夫、私はいつもそしていつまでも貴方の味方ですよ――
まるで佐々野少年の精神がギリギリまで追い詰められたこの時を狙い済ました様に女神・フラウワーが佐々野少年に優しく優しく、まるで駄々をこねる幼子をあやすように語りかける。
『ああ…フラウワー…』
――ああ、そんなに悲しまないで私のかわいいかわいい勇者様。貴方は決してこのまま消えたりはしない。今度こそ誰も貴方を傷つけられない完全で圧倒的な力を授けましょう――
そうフラウワーが語りかけると、佐々野少年の胸に刻み込まれた女神・フラウワーの眷族たる証の紋章が強烈に輝きその内 佐々野少年の周囲を覆っていた暗闇をも全て消し去る程の光となっていた。
そしてその光源となっている佐々野少年は…今までの人世で一度も味わったことが無い、暴力的なまでの幸福感と快楽を絶え間なく味わい続けて…やがて意識も自我も綺麗さっぱり失ってしまう。
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