第5章 “変貌”

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――かつて武術の師である叔父や、職務中・警備活動や捜査の際に被疑者から刃物や銃等の武器や凶器を向けられた事がある。その時に感じた本能的な自身の生命、あるいは同僚や一般市民の生命に対する危機感や恐怖心は祐文の心にしっかりと刻み込まれていた。 だからこそ祐文は気が付いた、今 自分の眼前で倒れ伏し完全に無力化したはずの佐々野少年から発せられるあの時と同じ…いやそれを遥かに上回る悪寒と危険性を。 「くっ…!」 思わずその場から飛び退り身構える祐文。その様子を見た眷族契約の強制破棄の為に佐々野少年の体躯を調べていたギシェムは怪訝そうに祐文に尋ねる。 『どうかしたんですか祐文さん?』 「ギシェム!早く佐々野君から離れろっ…何かとても嫌な予感がする」 先程の戦闘においても始終 冷静沈着だった祐文の尋常でない様子から、やっと佐々野少年の異変に気付いたギシェムも慌てて彼から距離をとる。 するとそのタイミングを狙っていたかのように再び佐々野少年が立ち上がる。がその様子は以前と比べても遥かに異常で焦点が合っていない様子で宙を眺め口から涎を垂れ流し何が可笑しいのかケタケタと声にならない笑い声を上げる。 (向精神薬等の薬物乱用時の症状に似ている…一体佐々野君の身に何が起きたんだ?) 『あっあれはまさかっ…!?』 「ギシェム、貴方は佐々野君に何が起こったのか知って…!?」 祐文が佐々野少年の変調を懸念し、その事について何か知っている素振りを見せたギシェムを問い詰めようとした時に…ソレは起こった。
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