第5章 “変貌”

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-祐文は夢を見ていた。たがそれはただの夢ではなく回り灯篭に映る影絵のような映像は、黒井祐文という人間の過去を大雑把にかつバラバラに映し出し祐文はその映像をただただボンヤリと見ていたが…どうしても目を逸らしてはいけない過去が映し出されそのシーンを食い入るように見つめる。 『それじゃあ、また明日』 そう祐文に言って手を振りながら10歳くらいの少年は自分の家に帰っていった。 やたらに蝉の鳴き声がやかましく、夕方になっても全く暑さが引かない夏休みのとある一日の事だったと今でもはっきりと思いだせる。 「…結果から言えばアイツは、オレの友人は家に帰る事はなかった」 映像を食い入る様に見つめていた祐文はそう呟く。 友人の母親から “ウチの子供がまだ帰ってこないんです“ と祐文の家に電話が掛かって来た時 祐文は途轍もなく嫌な予感がした。なぜならその日 祐文は友人からある事を聞かされていたからだった。 『夏休みの間にお父さんと会ってみようと思う』 友人の家庭はいわゆる母子家庭で母子と父親は別れて暮らしていた。 その事について友人は多くを語る事は無かったが、友人の体に見られる痣やタバコの火を押し付けられたような火傷の痕から祐文は幼いながらもなぜ父親と別れて暮らしているのかを朧気ながらも解っていた…解っていたからこそ友人の母親から電話で話を聞いた直後には家を飛び出していた。 「あの頃のオレは子供で…どうしようも無く無力なガキで、そして何も出来なかった」
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