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それは警察官となって多くの事件に係わるようになり一層強く感じる様になった。事件が起きた時には既に手遅れでいつも誰かが泣いていた。
事件を解決したとしても結局、何も、誰も守れずに友人が殺されたあの時と同じ結末を迎えた事の方が遥に多かった。
「…もっと自分に力があったなら数多くの、せめて目の前の悲劇を止められたかもしれないと考える事が多くなった」
--だったら私が貴方の望む力を差し上げましょう--
不意に祐文の強固な意識にある小さな小さな隙間を縫うようにして、その甘ったるい “声“ は祐文の耳を打った。
--貴方の目に映る遍く全てを救済する力を、全てを守り抜く力を--
慈愛に満ち溢れ、聴く者に絶大な安心感を与えるその “声“ は祐文の耳元で更にそう囁く。
「…オマエが何者かは知らないが、その話に乗るつもりは無い」
“声“ の主に対して祐文はそうきっぱりと断言する。
当初その “声“ を聴いた祐文は “声“ の持つ抗い難い魅力に引き込まれ思わず二つ返事で提案を承諾しそうになったが、同時にその “声“ になぜか強烈な嫌悪感を覚えた為に提案を拒絶し更にこう続ける。
「職業柄、オマエのように人の心の間隙に巧みに入り込んで口八丁、手八丁、あらゆる甘言と手段を用いて他人を信用させ利用し騙して破滅に追い込んだクズを腐る程見てきた…オマエからはそんなクズ共と同じ臭いがする」
--あくまでも “力“ を欲しないと?--
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