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「ああ、いらないねそんな出所もよく解らない力は…確かに今よりも力があったら考える時もあるが、それはオレ自身が悩んで、苦しんで、もがき続けた末に何とか掴んだと実感できなければ意味がないと確信している」
--それはまた随分とみっともない有り様ですね--
祐文に対して投げ掛けられたその “声“ にはどこか嘲笑が含まれていたが、祐文はその事を全く意に介さずその “声“ に応える。
「確かにオマエの言う通り、オレの生き方はみっともなくて情けないと自覚している。武術を学び研鑽を積んでいるのも、警察官になり職務を全うしているのも、結局 過去の罪悪感と無力さを清算したいが為の単なる自分勝手で自己満足な行為に過ぎない事も解っているし、目の前で起きている全ての事件や悲劇を止められ無い事も、そしてそれらの事で生まれる被害者を全員を救う事など出来ない事も解っている…いやそんな事を考える事自体おこがましいのは思い知らされている」
--フフフ、だからこそ “力“ が必要なのでは?私が与える力があれば貴方が後生大事に抱えているつまらなくてちっぽけな過去の罪悪感や無力さなど綺麗さっぱり消す事が出来ますよ--
「余計なお世話だな。例え他人から見ればどんなにちっぽけでみっともない有り様であろうが、オレの生き方はオレ自身で決める。そしてその道程で抱えた業も全て背負って生き抜くだけだ…だからオマエの言う力なんぞいらない」
--つまらない人間。貴方にもう用は無い……私のかわいい、かわいい勇者様に殺されるがいい--
祐文が改めて提案をキッパリと拒絶すると“声“ の主は冷たくそう言い放つ。
するとそれに反応する様に祐文が眺めていた回り灯篭が砕け散ってゆき……
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