第5章 “変貌”

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ギシェムは祐文が自身の大怪我の事をまるで他人事の様に冷徹に分析し、呟いているのを聞き “フッ飛ばされ地面に叩きつけられた時に頭も強く打っておかしくなってしまったのではないか?“ という強い疑念を抱き思わず声を荒げる。 「そう耳元で大声を叫んでくれるな傷に響く。それよりもこの傷は貴方の魔法で治せるのか?あとあの怪物は今どうなっている?」 『傷の方は今すぐ全部治す事は無理ですが多少時間を掛ければ可能です。怪物の方は…祐文さんが倒れた後すぐに集落の方に突進していきましたが、祐文さん達が事前に準備していた落とし穴に落ちて今は身動き取れない状況に陥っています』 ギシェムからそう聞かされた祐文は、本来なら “愚連隊“ 対策の為に造っておいた落とし穴に嵌まりその落とし穴の底に設置していた先端が尖った木の杭が右後脚に突き刺さり悶え苦しんでいる怪物の姿を確認する。 (幸か不幸か、怪物化して我を失っているからこそあんな単純な罠に引っ掛かてくれたみたいだが…アレは元々対人用のトラップだ。あんな常識はずれの怪物をいつまでも足止め出来ないな) 「■■■■■■―!!」 祐文が罠に嵌まった怪物をじっと観察していると、怪物は又もあの不快な咆哮を上げて祐文が考えていた通り僅かな時間で落とし穴から強引に脱出して意識を回復した祐文の方へくるりと向き直る。
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