第5章 “変貌”

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『なっ!?』 この祐文の常軌を逸した行動を目にしたギシェムは激しく動揺し、今度こそ祐文が殺されると感じ絶望的な気分に陥るがそこではたと気付く。 先程の勇者や“愚連隊“ そして四匹の怪物達との戦闘においても常に祐文の動作は緩慢に見えた事を。 しかしそれでいて動作の速度は決して遅い訳ではなく、むしろ緩やかにみえつつもその所作は恐ろしく素早くかつ正確であった事を。 更に移動の方法、より正確に言うならば基本的な足運びの方法が常人のソレとは異なり、通常の蹴り足のつま先に力を加えて移動を開始する方法では無く。足裏を水平に保ったまま地面から垂直に上げ、体の重心をまるで空中に浮かせ静止した状態にし移動の際はその重心を移動したい方向に転がすようにして体全体を一斉に移動させるという特異で非日常的な方法を取っている事を。 そして何よりその方法で移動を行った時その姿は非常に緩やかでとても素早く動いている様には見えない。しかし実際その速度は恐ろしいまでに速く、今から思い返してみれば最初に勇者を昏倒させ次に “愚連隊“ の頭領・副頭領を倒す為に二人の所にまで間合いを詰めた際にも、それなりの距離があったにもかかわらず祐文はアッという間に間合いを詰めまるで “地面を縮ませた“ としか言い様の無い程の素早い動きを見せていた。 『目突きや金的・人体急所への攻撃などにばかり目がいっていましたが、まさかその影でこれ程まで異質な事を行っていたとは…』
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