第5章 “変貌”

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怪物を投げ飛ばさした祐文は今が怪物を仕留め佐々野少年を元に戻す絶好の、そして唯一の機会と捉え早速行動に移る。 その為にまず祐文は今まで身体中の痛覚を騙す事に使用していた脳内のイメージを切り替え温水の詰まった水袋では無く、非常事態に直面した時・より正確に言うならば “死“ に直面した時の事を強く強く思い出す。 ―武術の師である叔父に真剣を向けられた時― ―山中での修練の最中、飢えた野犬の群れに囲まれた時― ―警官になりたての頃、人里に餌を求めて降りてきた羆をたった一人で制圧しなければならなかった時― ―機動隊所属時、銃器を含む凶器を所持した複数人の元軍人で構成された犯罪組織を検挙しなければならなかった時― ―そして10歳の時に遭遇した、その後の自分の生き方を決定付けたあの事件― 今までの人生の中で起った本当に “死“ に直面した場面を頭を高速回転させ0コンマ数秒の内に引き出し再生させた祐文はそれにより普段は脳に掛っている サイコロジカル・リミットを強制的に外し、数分の間に限定されるが己の限界を越える力、いわゆる “火事場の馬鹿力“ を無理矢理 引きずり出す。
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