第6章 “帰還“

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祐文はギシェムに諭すようにそう言ったものの祐文の容態は、少しどころかかなり深刻であった。 それはつい先程まで強制的に外していた脳のサイコロジカル・リミットが再び掛かった事により痛みを伝える神経を圧覚する事が出来なくなり、感覚を騙しきれなくなり再び身体中に痛みを感じるように戻った点と、一時的ではあれ “火事場の馬鹿力“ を無理矢理 引きずり出し己の限界を越える力を使用した為、リミットが掛かるのと同時に限界以上に使用した肉体が悲鳴を上げて、今度は逆に自身の肉体を保護する為に強制的に身体を休ませようする力が働き祐文がどんなに頭で命令しても身体の方がそれを拒絶しようとする事態が起こっていた。 (解っていた事だが “空尽・クウジン“ の使用はやはりリスクが大きい。脳のゲート・コントロールとサイコロジカル・リミット外しを意図的に行うこの業は一時的には限界を越えた力を引き出せても、その後の疲労が半端じゃない…それに加えて捻挫しダメージを負っている右足で “震央・シンオウ“ 人間の生命活動に最も必要な臓器である心臓に強力な打撃を与える事で、一瞬で相手の意識を絶ち加える衝撃をより大きくする事により心室細動を引き起こし命をも奪う事が可能な業を放った事により業の威力で自身の右足を更に痛める結果になってしまった) 祐文は心の中でそう呟き、大怪我を負った状態であの怪物と戦った事を多少後悔するものの、今はそんな事で足を止めている場合では無いと己自身を奮い立たせ、意識を失っている佐々野少年を背中に担ぎ立ち上がる。
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