第6章 “帰還“

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(自分に “動くな“ と大声を浴びせたのは、あの若衆のリーダーを始めとする集落の住人達か…老人も女子供も関係なくほぼ全員が鋤や鍬・角材等で武装してこちらを取り囲んでいる。しかもそれだけじゃなくどうやら佐々野君や “愚連隊“ の支配から造反した村の住人達や “愚連隊“ によって住んでいた村や街を焼け出された難民達も数多く混じっている…目に見えるだけでもざっと百人近い人数に囲まれているな。しかも全員が殺気立っている…) 周囲の剣呑な、いやそれを遥かに上回る危険な状況を確認した祐文がどうすればこの危機的状況から脱出できるか頭をフル回転させ考えていると、周囲を取り囲んでいる人垣が不意に割れて集落の村長が現れ、若衆のリーダーと並び祐文に例の鋭い視線を送りながらこう言い放つ。 「勇者、いや大罪人ササノ・トーイをこちらに引き渡してもらおう」 「断る…と言ったら?」 祐文の返答に周囲を取り囲む人々の怒りと憎しみの感情が一気に跳ね上がり、何人かは今にも祐文達に飛び掛かろうとするが、村長はそれらの人々の行動を片腕を上げ制止すると再度 祐文達に問い掛ける。 「どうしても引き渡す気は無いと?」 「無いですね。元々 佐々野君は私と同じ世界の住人です。その佐々野君を元の世界に連れて帰る事が私の仕事の一つでもあります」 「だから引き渡す気は無いという訳か」 「ええそうです。逆になぜ貴方達が彼の身柄を欲しているのかを私に教えて欲しいぐらいですよ。なにせ彼はもう勇者でもなんでも無いし、彼の取り巻きだった “愚連隊“ も潰滅し貴方達を脅かすモノは無くなった。なのに何故そこまで執拗に、用意周到に佐々野君の身柄が欲しがるのですか?」 「・・・・」
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