第1章ープロローグー

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 堀越 翔太という少年がいた。少年の家族は貴族で優秀なエリート家族だった。そんな家族の中、はっきりと言って少年は落ちこぼれだった。魔力が家族の約三分の一しかなかったのである。しかも、攻撃魔法、守護魔法、補助魔法が全く使えない。回復魔法のみ。その回復魔法も病気を治す、傷を治す、魔力も回復させるなんてこと出来たら天才だったのだが出来るのは切り傷を治す程度。完璧な落ちこぼれだ。見た目も一人平凡なことから周りからは捨て子扱いだ。子供に対しても容赦ない態度、暴言を吐く大人ばかりの中、家族だけは優しく愛情を注いでくれた。少年が悩み苦しんでる事を深く理解していたのは親の愛情からだろう。両親は「産まれてきてくれただけで私達は幸せだ。」と言ってくれていた。二人の兄も「お前は何も悪いことしてないだろう。」「困ることがあったら俺たちが助けてやる。」と出来の悪い弟を見下すことは無かった。しかし、少年の悩みは消えなかった。いや、優しい家族のもとだからこそ情けなくなった。何も返せない自分に。  少年は、せめて回復魔法位は誇れるようになるよう修行した。しかし、世の中優しくない。回復魔法だけは落ちこぼれじゃなく普通並になった。あくまで普通だ。一般的なものの解毒。風邪程度の解熱。疲れをとる程度の解熱。魔力の中回復。凡人には超えられない壁があった。家族は少年の努力に涙ぐむほどに褒め、頼ってくれた。少年は嬉しさよりいたたまれない気持ちのが強かった。家族は全部いや、それ以上の事を出来ることが少年には分かっていたからである。
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