第1章ープロローグー

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Side父 堀越政木  三男の翔太は生まれながらにして魔力の弱い子だった。私達夫婦は憂いた。この家に生まれなければ、あの子はどれほど幸せだったろうと。この家柄では落ちこぼれだとしても一般家庭に生まれれば、少し劣る程度。それなのに、この家に生まれてしまったせいで辛い思い、人生を味あわせてしまっている。  私達は自分達の持てる力を全て使ってでも守ることを決意した。しかし、その決意虚しく翔太は三人の息子の中でも誰よりも手のかからない子だった。自分自身で戦う小さな背中に何回涙しただろう。「無理するな、私達はお前が居てくれるだけで幸せなのだから」という言葉に苦笑いが返ってくるやるせなさと言ったら、親として情けなかった。  翔太は気づいた時には「子供」ではなかった。大人っぽいのではない、思考が5才前後で成熟してしまったのだ。周りの大人の心ない言葉によって。憎かった。子供らしく生きる道を閉ざした自分を含めた大人が。
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