第十三話 今日も、また

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もう10時か。この世で一番好きな相手に愛の告白をして、いったい何時間経ったのだろう。 岸は全部気持ちを吐き出してから、俺の胸の中でずっと静かに泣いていた。 岸、お腹空いてないかな。そういえば、今日の夜御飯なんだったんだろ。 母さんそろそろハンバーグ上手くなんねーかな。 なんでロールキャベツが絶品でハンバーグがあんなに酸っぱいんだよ。 何を入れてるんだ毎回毎回。 そういえば、岸のとこの料理って何でもおいしいんだよなあ。 やっぱいろいろ体調のこととか考えてるんだろうな。 大変なんだろうなあ。でも、もし俺が岸と将来もし… 「澤ちゃん。」 不意に岸が俺の胸を少し強めに掴んできて、涙が少し乾いた声で俺を呼んだ。 「何だよ。」 「澤ちゃん。」 「だから、何だよ。」 「…なん…だよね…?」 「お前、ほんと声小さいわ。全然聞こえないんだってば。」 もう声が小さいとか聞きとれないとか、そんなことはどうでも良かった。ただ、岸の声が聞きたくて聞きたくて、俺はしつこく優しく岸に問いかけた。 「澤ちゃんは…」 「なあに。」 「澤ちゃんは俺のものなんだよね?」 岸は案の定こちらを見てはくれないが、自分の胸の中にいるだけで、それだけでも十分だった。 「ちげーよ。」 「え?」 俺は少し手加減しながら、岸を強く抱き締めた。 「お前が俺のものなんだよ。勘違いすんな。」 岸は少し笑って、俺の背中に手を回してくれた。 「うん。ごめん。」 俺は嬉しくなって、岸を限界ぎりぎりまで引き寄せた。 俺は、幸せだ。俺達は、幸せなんだ。
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