第十三話 今日も、また

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「もしもし。俺。」 「間に合ってます、そういうの。」 「いやいや、俺だって。」 「だから間に合ってます。お金ないんですわ、ここのところ不景気で。」 「岸。」 「…」 「お前、今暇?暇だろ。」 「忙しい。」 「何してんの?」 「別に。普通に生きてるだけ。」 「忙しいな、お前。」 「生きるのって、忙しいんだよ。澤ちゃん、知らないでしょ?」 「お前は、知ってるんだ。」 「知ってる。十分知ってる。」 「ていうかさ、俺お前の家の前で電話してんだけど。」 「知ってる。見えてるもん。」 「インターホン押すべきなところだよな、まず。」 「そうだよ、不審者だよ澤ちゃん。」 「詐欺なんてやってないって。」 「さっき低い声で“もしもし、俺”って言ったなかったけ?」 「いつも通りの低音ボイスだよ。」 「イケボだ。」 「イケボだよ。」 「澤ちゃん。」 「お前、いいかげんに…」 「鍵開いてるから、入って。」 「お、おう。」 よし、頑張れ、俺。
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