6人が本棚に入れています
本棚に追加
「もしもし。俺。」
「間に合ってます、そういうの。」
「いやいや、俺だって。」
「だから間に合ってます。お金ないんですわ、ここのところ不景気で。」
「岸。」
「…」
「お前、今暇?暇だろ。」
「忙しい。」
「何してんの?」
「別に。普通に生きてるだけ。」
「忙しいな、お前。」
「生きるのって、忙しいんだよ。澤ちゃん、知らないでしょ?」
「お前は、知ってるんだ。」
「知ってる。十分知ってる。」
「ていうかさ、俺お前の家の前で電話してんだけど。」
「知ってる。見えてるもん。」
「インターホン押すべきなところだよな、まず。」
「そうだよ、不審者だよ澤ちゃん。」
「詐欺なんてやってないって。」
「さっき低い声で“もしもし、俺”って言ったなかったけ?」
「いつも通りの低音ボイスだよ。」
「イケボだ。」
「イケボだよ。」
「澤ちゃん。」
「お前、いいかげんに…」
「鍵開いてるから、入って。」
「お、おう。」
よし、頑張れ、俺。
最初のコメントを投稿しよう!