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もう10時か。この世で一番好きな相手に愛の告白をして、いったい何時間経ったのだろう。
岸は全部気持ちを吐き出してから、俺の胸の中でずっと静かに泣いていた。
岸、お腹空いてないかな。そういえば、今日の夜御飯なんだったんだろ。
母さんそろそろハンバーグ上手くなんねーかな。
なんでロールキャベツが絶品でハンバーグがあんなに酸っぱいんだよ。
何を入れてるんだ毎回毎回。
そういえば、岸のとこの料理って何でもおいしいんだよなあ。
やっぱいろいろ体調のこととか考えてるんだろうな。
大変なんだろうなあ。でも、もし俺が岸と将来もし…
「澤ちゃん。」
不意に岸が俺の胸を少し強めに掴んできて、涙が少し乾いた声で俺を呼んだ。
「何だよ。」
「澤ちゃん。」
「だから、何だよ。」
「…なん…だよね…?」
「お前、ほんと声小さいわ。全然聞こえないんだってば。」
もう声が小さいとか聞きとれないとか、そんなことはどうでも良かった。ただ、岸の声が聞きたくて聞きたくて、俺はしつこく優しく岸に問いかけた。
「澤ちゃんは…」
「なあに。」
「澤ちゃんは俺のものなんだよね?」
岸は案の定こちらを見てはくれないが、自分の胸の中にいるだけで、それだけでも十分だった。
「ちげーよ。」
「え?」
俺は少し手加減しながら、岸を強く抱き締めた。
「お前が俺のものなんだよ。勘違いすんな。」
岸は少し笑って、俺の背中に手を回してくれた。
「うん。ごめん。」
俺は嬉しくなって、岸を限界ぎりぎりまで引き寄せた。
俺は、幸せだ。俺達は、幸せなんだ。
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