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  「――!」  血が凍るような感覚と共に、刃は目を開いた。 「どうしましたの?」  エリーズが、少し驚いた顔で見ている。  小物の並んだ飾り棚や、装飾のある大きな姿見。天蓋付きの大きなベッド。窓際の瀟洒なテーブル。  一人ティータイムと洒落込んでいるらしい、金髪碧眼の少女。背中に当たる壁の感触。  自分とエリーズの暮らす部屋。  落ち着き無く辺りを見回して、刃は息を吐いた。長い髪が汗で貼り付いている。 「いや……夢見が悪くてな」  拭おうとして、左手が愛刀を握ったままだと気付く。白く強ばった掌は、はがすと提げ緒の形がくっきりと付いている。  大きく息を吐いて、髪をかき上げた。  エリーズが瞬きをし、思い出したようにカップを置く。 「顔でも洗ってきたらいかがですの? 酷いことになってますわよ」 「……ああ」  立ち上がって、頭を振る。  肌に張り付くシャツを鬱陶しく思いながら、ふと訊く。 「坊主は居るか」 「さぁ? またどこかで遊んでるんじゃありませんの?」  エリーズはいつも通りそっけなく言って、紅茶を飲んでいる。  実家を離れて暮らす、資産家のお嬢様。相変わらず弟に興味は無いらしい。 「そうか」  まだ腹の奥に残る、嫌な感覚を気にしながら、刃は部屋を出た。  
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