5/12
前へ
/39ページ
次へ
   ++―――++  昼過ぎの住宅街。他より一つ背の高いマンションの上。  少女が、キャンディーを舐めている。  オレンジの日傘をさして、フリルブラウスにプリーツスカート。  造作は少女というよりは少年に近い。  その屋上には上る階段も無いのだが、彼女は公園のベンチに居るように、建物の端へ座っていた。  陽気の下、瞼の半分下がった目は遠くを見ている。  暇そうに細い足が揺れているが、下を歩く人々は気付かない。  そのうち、ある一点を見つけ、少女の口元が笑みの形をつくった。 「なーんだぁ。面白そうなの居るじゃん」  言ったかと思うと傘を持ったままぱっと飛び降り、その姿は空中で消えた。  ++―――++  
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加