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流れの緩やかな川沿いの土手には、まだ若い桜の木がいくつも植えられている。
咲き初めの今頃は、桜色が濃く見える。
時々それを立ち止まって見上げながら、宙は散歩中だ。
今日は天気が良い。
出る前に、かっかが付いて行きたそうにしていたけれど、刃が代わり来た。
あんたじゃ目立つと言っていたのは、宙もその通りだと思う。
(エリックも来ればいいけど……日焼けしちゃうよね)
緑が伸びはじめている道は、春の花がいくつも見つかって面白い。
後ろに付いて来る刃が、名前を教えてくれる。
「ね、これ何? これは?」
「なずなと菫。知ってるだろこれくらい」
「えー? あ、これ知ってる! たんぽぽ!」
「正解」
この調子で延々歩いて行く。
いつの間にか、橋から橋までの区間歩いていて、宙は土手から下りる階段に座った。
「ちょっと疲れたよぅ」
「まだ家が見える距離で何言ってんだ」
「刃、疲れてないの?」
「オレはまだ元気だぜー?」
笑われて、宙はちょっと悔しくなる。
「刃のがちっちゃいのに」
「そりゃサイズはな。歳はお前の倍以上だよ」
「いくつ?」
「ひみつ」
「えー!」
ちゃんと言ってと叩いたら、刃は階段を転げ落ちた。ぎゃあとか言って落ちたから、ちょっとびっくりして心配した。
けれどすぐに、戻って来て反撃されたから宙は笑い転げる。
今度は、自分が落ちかけて助けられた。
「何やってんだお前はよゥ」
「だって教えてくれないんだもん」
笑っていると、誰かやって来たらしい。
刃が宙の後ろに顔を向け、すぐに隠れた。
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