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「どうした絆創膏など貼って」
「ころんじゃった」
パックのりんごジュースを飲みながらの宙は、もう上機嫌で膝の上だ。
その膝小僧と腕には、いくつか絆創膏が貼られている。
テーブルの上で茶を一気飲みしている刃を見て、経緯を推察した死神は呟いた。
「……大人げの無い」
「いーだろたまにゃ」
全然「たまに」ではないが。
おやつと飲み物の準備をしたのは刃だ。宙が転んで泣いたのは黙っておく。
「この上天気じゃ、部屋ん中でうだうだしてる方が体に悪ィって」
「かっかとエリックも、おさんぽ行けばいいのに」
「目立つと言われたからな」
ちらりと見られた刃が目を逸らす。その先でエリックも頷いている。
「エリックも?」
「……日なたは」
「あんまりお出かけしないもんね」
「つーかこの白コンビが健康的に日焼けしてんのなんざ、想像できねーだろ」
「あ、そっか」
宙に納得され、男二人が憮然と顔を見合わせる。
刃は笑いを堪えようとして、結局喉で笑っている。死神が目を向けるが、逆に大笑いされた。
「笑い過ぎだ」
「こりゃ失礼」
顔が痛ェとか言いながら両手で頬をもんでいるが、彼女の目はまだ笑っている。
彼は諦めて、宙の頭を撫でた。
「元気なのは良いが、ほどほどにしておけよ」
「うん!」
頷く宙もしっかり笑っている。
道を訊いてきた子のことは、もう忘れていた。
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