第1章

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ある日、若くはない男性が扉を開けた。 珍しいことだ、と私はじっと見ていた。 お母さんが、小さく息を呑んだ。 お客様も店内を見渡していたけれど、お母さんのところで目を止めた。 「君、……辞めたとは聞いたが、………そうか。ここで?」 「はい。 地元に帰ってきたんです」 「そう。君の服は、やはり違うね」 お客様は私の頭から足元まで視線を巡らせた。 恥ずかしくて、隠れたかったけれど、それはお客様に失礼になる。 お母さんとこの店を守っているのは私だ。 いつもよりも姿勢よく立派に見えますように、と願った。
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