9人が本棚に入れています
本棚に追加
ある日、若くはない男性が扉を開けた。
珍しいことだ、と私はじっと見ていた。
お母さんが、小さく息を呑んだ。
お客様も店内を見渡していたけれど、お母さんのところで目を止めた。
「君、……辞めたとは聞いたが、………そうか。ここで?」
「はい。
地元に帰ってきたんです」
「そう。君の服は、やはり違うね」
お客様は私の頭から足元まで視線を巡らせた。
恥ずかしくて、隠れたかったけれど、それはお客様に失礼になる。
お母さんとこの店を守っているのは私だ。
いつもよりも姿勢よく立派に見えますように、と願った。
最初のコメントを投稿しよう!