第1章

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お母さんは、その人と私をじっと見ていた。 「うちの子は、もう少し大きいかな」 その夜、お祖母ちゃんがお母さんに話しているのを聞いてしまった。 『あの男が来たんだって?』 『ええ。』 『それで向こうの店を辞めたのかい』 『違うわ。彼は関係ない。』 『自分の子にろくに会わないような奴は……』 『……あの人のせいじゃないわ』 …… あの人が、お父さんなの? そう聞けたら良かったんだろうか。 別の子の、お父さんなの? それから季節が変わって、また何度かその人は訪れた。 私を見ては懐かしそうな、確かめるような目をする。 そっと着ている服を触る事もあった。 どうしてそんな優しい目をするの、 『お、と、う、さ、ん』 心で呟くと、それは意外なほど収まりが良かった。
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