第1章

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私がそうして、お父さんと呼ぶのが当たり前になった頃。 お父さんが、やって来た。 一人じゃなかった。 女の子が腕に引っ付いていた。 私より少し大きなその子は、私とそっくりな服を着ていた。 お母さんの作った服。 ネットで売られたもの。 どうして!? 私のお父さんと、お母さんの作った私の服なのに! あの子が持っているものが全部欲しい。 私とお母さんとお父さんが、一緒にいられたらお母さんは悲しい目をしないはず。 「わあ、お父さんの言ったとおり、私にそっくりね。お父さんったらいつも帰ってこれないお詫びに、ここの服だけ送ってきてたのね」 「仕事が忙しかったんだよ」 その子が声に出して『お父さん』と言ったのが、憎かった。 私は声に出せないから。 違うわ。 全然違う。 アンタの持ってるもの、そっくりそのまま私が奪って見せる。 お父さんは、私とその子を交互に見た。 お母さんがカウンターから出てくる。 お父さんが、また私をじっくり眺めて、一つ頷いた。 今までの迷いが無かったように、口を開いた。 「これ、そっくりそのまま下さい」
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