千客万歳

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 「あなたのお兄様……もしかして、ネットオークションとかお好きですか?」  それは、本来なら大分失礼な物言いだと、籠島でも分かる。  先述の通り、『論理破綻』の犯行予告のカード等は、物的証拠として、警察に押収される。あのカードが本物だとして、それがオークションの商品として扱われるのはおかしい。  「これは、違法で売買された可能性がありますね」  そして、それを落札した緑ヶ丘椚の兄は、ほぼ間違いなく法を犯した。過去に盗品をオークションにかけた犯罪があったのも確かだ。  「ですよね……やっぱり」  緑ヶ丘の顔に落胆の色が表れる。そりゃあそうだ、と流石の籠島も同情を禁じ得なかった。  「兄は……私に中を見たか、と訊いたんですよ……」  その時の兄の表情は危機迫っていたらしい。普段不規則な生活を送っているせいで顔色が悪いのはいつものことらしいが。  「それで……君は何て?」  籠島が訊いた。  「開けて見たって……そしたら、奪うように……。私、怖くなって……うぅ……」  次第に涙声になってくる緑ヶ丘。今まで抑えていた感情が今になって溢れてきたのかもしれない。
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