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怪盗と探偵。
立場はまるで正反対だけれども、少なくとも、彼女ーー二階堂三階のしていたことは、法の枠を越えていたものの、人々に喜ばれていた。
一方で、探偵である籠島には、法律の範囲内で、緑ヶ丘椚に喜ばせる結果を出さなければならない。
理屈は分かっているものの、釈然としない。
(……あー、くそ。あいつの立場の方が良かったなんて思っちまったじゃねえかよ……)
緑ヶ丘には気付かれないように、小さく舌打ちをして、籠島は緑ヶ丘家の玄関に立った。
立ってみると、やはり思った通りだがーー大きい。『緑ヶ丘邸』と言った方が正しい。一般家庭、いや、少なくとも、探偵事務所のドアよりはずっと大きいのが分かる。
どうやら、緑ヶ丘の言っていたことは謙遜らしかった。
「どうぞ、遠慮なく上がってください。どうせ今は大人は家政婦さんしかいませんから」
そう言って、緑ヶ丘が玄関を開ける。緑ヶ丘に促されて、籠島は緑ヶ丘邸に入る。
「……お兄様は、もう成人だと聞きましたが?」
「あれは大人とは言いませんよ。少なくとも、同じ家で育った私からはそう見えます」
吐き捨てるように、緑ヶ丘はそう言った。
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