千客万歳

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 「なら、良いじゃないか」  口を尖らせる籠島。その姿は有名な私立探偵と言うよりは、ただの子供にしか見えなかった。  「ええ、ですから悪いとは言っていません。ですが、この当て字の付け方はまるで中学生のようだな、と少し頭を掠めただけです」  「……それは『思った』と同意語だろ。僕のことを中二病だと、そう思っただろ」  「……………………いいえ」  「……君は、嘘を吐くのが、下手なようだから、少し黙っててくれ」  頭を抱え、椅子に座る籠島ーー別段、普段と何ら変わらない日常のはずなのに、何故に彼女との会話ではいつも精神的に傷を負うのか……。  いくら名探偵と言えど、その辺のことは何も分からない。  だから、いつも細やかな反撃として、おかしな名前を弄っているのに。  「あの後、結局ーーコソ泥はまだまだ活動してたのですよね?」  「……折角、『論理破綻』って命名したのに……」  「コソ泥はコソ泥ですよ」  犯罪者には容赦の無い尾張だ。  「それで、さっきワイドショーで知ったのですが、今回で3件目だそうですよ」  被害者は汚職の容疑の掛かっていた政治家達だった。
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