千客万歳

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 おかげで警察の捜査が行われ、政界は今や大騒ぎだ。  「今、世間は完全にあのコソ泥の支持者ですよ。『彼こそが平成の鼠小僧だ!』って」  尾張は不服そうに話す。  『論理破綻』が今していることは間違いなく犯罪だ。絶対に重罪のはずだった。だが、世間の意見が、そうした倫理を狂わせているのは確かだった。  「……そう。まあ、言わせとけば良いんじゃないか?」  対して、籠島の返事は素っ気ないものだった。頬を膨らませて、ポコポコと殴る尾張に目もくれず、ただ黙り込むだけだった。  (『彼こそが』……か。まだ、そこまで『彼女』のことは知れ渡ってないんだな……)  怪盗『論理破綻』と対峙した、あの事件ーー籠島はそこで初めて知ったことなのだが、『論理破綻』は女性だった。  変装の疑いもあるが、体つきからして、まず女性で間違いないだろう。  二階堂三階。  生物学者を名乗っていたが、実際にそんな名前の研究者は存在しなかった。  もしかしたら、『二階堂三階』と言う名前自体も偽名なのかもしれない。  (……まあ、確かに偽名の可能性が高い名前だな) その辺のことは次に会った時にゆっくり訊くとしてーー
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