千客万歳

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 ようやく深呼吸をして落ち着いた少女は、ゆっくりと部屋の中を見渡しながら、次いでこう言った。  「助けてください!」  こうして、普段通りーー籠島回路は事件に巻き込まれる。  依頼人埜少女ーー緑ヶ丘椚は、近所の某中学校に通う15歳の中学3年生だそうだ。  ふわふわとウェーブのかかった茶髪が、育ちの良さそうな雰囲気を醸し出している。  「……ふぅ、突然すみません。慌てていたもので……」  尾張が淹れた緑茶を飲んで、ようやく落ち着きを取り戻した緑ヶ丘が言った。  その仕草一つ一つから、やはり品の良さが垣間見える。  「私はこの事務所の所長。『自称探偵』の籠島回路です。『かいろ』と書いて、『まわりみち』と読みます」  「私は尾張肇です。この自称探偵(笑)の助手をしているものです」  「……尾張。折角、来てくださったお客様に私の腕を不安に思わせるような事を言うんじゃないよ」  「ですが、『自称探偵』と言う肩書きの割りにはズカズカと他人の謎に介入しようとしたがる厭らしい性格でしょう?」  「営業妨害並びに、侮辱罪だ。やっぱり、少しーーいや、未来永劫黙りたまえ」
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