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第一今は性格の話は関係無いだろう、と籠島は尾張の頭を掴んで、部屋の奥へと押し込んだ。
そんなやり取りをポカーン、と見ていた緑ヶ丘はいつの間にか緊張が解けていることに気付いていない。
むしろ、友達の家に遊びに来た、くらいの余裕がいつの間にか生まれていた。
(まぁ……まずは依頼人にリラックスしていただいて、次に詳細かつ正確な情報を汲み取らねばね)
これはあくまで事務作業だ。そう念頭に置いて、笑顔で緑ヶ丘に接する籠島。
その甲斐あってか、ようやく緑ヶ丘の表情も和らいできた。
「さて……緑ヶ丘椚さん。あなたの依頼内容をお聞かせください」
優しく語りかけるように、笑顔の籠島に心を許したらしく、ゆっくりと頷いて緑ヶ丘は口を開く。
「……私の家は、まあ、確かに裕福ではありますがーーそんな別荘を持っていたりとか、高級車に乗っているとか、そう言うのではないんです……」
緑ヶ丘の両親は共に公務員。安定した収入もあり、生活に不自由したこともないと言う。
緑ヶ丘の育ちの良さそうな雰囲気もその影響か、と適当に思いながら籠島は話を聞いた。
「家族は、父、母、そして、兄と私です」
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