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五話【最悪の夢】
「いいか?とにかく、基本さえ判っちまえば、後は簡単だからよ」
「あ、はい」
「…箒で空を飛ぶのかと思ってたけど…そういう訳でもないんだね」
ヴィオレットと海、波は魔法練習中のようだ。
波は礼儀正しく聞いているが、海は適当だ。
「ん?まぁ、中には飛ぶ奴も居るけどな。特別必要な訳じゃねーし。実践向きでもねーだろ?」
「……まぁ、確かに」
あ、居るんだ…と密かに海は思った。
そんな最中――
「…あ、出来ました!」
――波が浮遊魔法の基本で、羽を浮かす事が出来たようだ。
「おぉ!やったじゃねーか、波!!やっぱ、お前等は俺が見込んだだけはあって、そんじょそこらの奴とは出来が違うぜ。愛しい奴等だ!」
次の瞬間、ヴィオレットが波を抱きしめる。
「きゃぁ!?ヴィ、ヴィオレットさん…!!?」
波は驚いた声を上げた。
「波!…この…変態野郎!」
海がヴィオレットに蹴りを入れた。
痛みでヴィオレットが波から離れる。
「…コレでも喰らえば?もっと痛くて、冷静になれるかもよ?」
冷笑しながら海は漬物石サイズの石を浮かせてヴィオレットに向けた。
「海!私は、大丈夫よ?だから…落ち着いて?ね…?」
「波……判ったよ、ごめん」
波が慌てて宥め、宥められた海は石をおろした。
『海…ココへ来てから何時もこんな様子……私を心配してくれているのは判っているけど…こんな風に無茶ばっかりしてたら、疲れちゃうだろうし……私より、もっと、自分を大事にしてあげて欲しい…』
「…喉が渇いた。何か飲んでくる。ほら、波、行こう」
「おい、ちょっと待てよ。飲み物の場所、知ってんのか?俺が案内してやるって」
「ご心配なく。見取り図で殆ど把握してますから。…失礼します」
「あ、海、待って!…ヴィオレットさん、ごめんなさい、失礼します」
あくまでも冷たい海。
そんな海の態度も交えて謝罪し、波は海を追いかけた。
『波は、僕が守らないと……変な奴等のところになんて置いておけない…。僕が…しっかり守ってやらないと…。波は優しいから…その優しさにつけこんでくる奴等に気付けないんだ…。だから、僕が守らないと……波だけは、絶対、守らないと…』
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